2023年3

著書紹介:佐野孝治、坂本恵、村上雄一『外国人労働者と支援システム  日本・韓国・台湾』(八朔社、2023年3月)

本書は、欧米諸国に比べ、共通の社会経済システムと課題を持つ日本・韓国・台湾について、外国人労働者受入れの現状と課題を明らかにし、制度・政策・支援システムの比較を踏まえて、多文化共生を基本に置いた持続可能な外国人労働者受入れシステムについて論じています。

佐野、坂本、村上の3名が外国人労働者に関する研究を始めたのは、2007年に福島県の縫製企業で、時給300円で働かされていたベトナム人研修・実習生を支援し始めたことが契機となっています。2011年以降、ほぼ継続して、文部科学省の科学研究費に採択され、日本、韓国、台湾における外国人労働者の実態と外国人労働者政策に関する国際比較研究を進めてきました。本書は、この共同研究の近年の成果の一部です。

日本の外国人労働者数は、2012年の68万人から2021年10月には172.7万人となり、10年間で2.5倍に増加しています。韓国と台湾は増加率こそ日本に及びませんが、2021年現在、それぞれ86万人、67万人であり、就業人口に占める割合はそれぞれ3.1%、5.9%と、日本の2.6%を超えています。

現在、アジアでは経済成長と少子高齢化が進む中で、すでに「外国人労働者争奪戦時代」に突入しています。その中で、日本は、経済停滞や円安等で、「働く国としての魅力」を急激に低下させています。特に、人口減少が深刻で、外国人数が相対的に少ない地方における受入れシステムや支援体制の整備は非常に遅れています。そのため、経済・社会発展と外国人労働者の人権を両立させていくための、持続可能な外国人労働者受入れシステムを構築していくことは緊急の課題だと思います。本書が、外国人労働者、移民、多文化共生に関心を持つ多くの読者の目に触れ、何らかのヒントになれば幸いです。

著書紹介:伊藤俊介『近代朝鮮の甲午改革と王権・警察・民衆』(有志舎、2022年)

本書は2009年度に韓国の慶熙大学校一般大学院史学科に提出した博士論文をベースに、その後に発表した論文も加えて大幅な加筆・修正を施したものです。

甲午改革とは日清戦争開始直後の1894年7月から1896年2月までのあいだ、朝鮮政府によって行われた一連の近代化推進運動のことです。この改革において朝鮮開化派が目指した近代国家像とはどのようなものだったのか、それが朝鮮に対する影響力拡大を狙う日本の介入によりどのように変容したのか、さらにそうして進められた改革に一般民衆はどのように反応したのかなどの問題関心について、朝鮮王朝の王権構想と警察制度改革をとりあげて検討しています。

多くの方に手に取っていただけますと幸いです。

 目次

 序章 甲午改革における「近代」への視角

 第1章 甲午改革と王権構想

 第2章 甲午改革以前の警察機構と開化派の警察構想

 第3章 甲午改革と警察制度改革

 第4章 警察と民衆

 第5章 警察制度改革と警察官吏

 第6章 断髪令と民衆蜂起

 終章 甲午改革の本質的性格

書籍紹介:『21世紀のアメリカ資本主義―グローバル蓄積構造の変容』(大月書店、2023年3月)

本書は、編者(河音琢郎、豊福裕二、野口義直、平野健)を含む18人の執筆者によって書かれました。序章と合計6篇19章で構成されています (ix + 345)。アメリカ政治経済に関する各分野の専門家たちが結集して、それぞれハイレベルの議論を展開できていると思います。

私は、第1篇第1章「マクロ経済と景気循環」を担当しました。アメリカの異端派経済学者で制度学派の創始者であるソースタイン・ヴェブレンの下で学び、のちに景気循環研究の世界を切り開いてこの分野の大家となったウェズリー・ミッチェルが最初に考案して、ラディカル派政治経済学の発展に対する偉大な貢献者であるハワード・シャーマンが継承した景気循環計測法を用いて、アメリカ経済を景気循環から見て論じました。

各章ともハイレベルな内容ですが、一般の読者も理解できるように書かれています。アメリカと資本主義の問題に関心のある方には、ぜひ本書を手に取って、全体を読んでほしいと思います。

(十河利明・経済経営学類教授)

大学院経済学研究科・学位記授与式が行われました

和5年3月24日(金)に、大学院経済学研究科の学位記授与式が行われました。

修了生15名一人ひとりに末吉健治研究科長より学位記が手渡され、お祝いの言葉が述べられました。修了生のみなさま、誠におめでとうございます。

学類長賞表彰式(卒業生)が行われました

令和5年3月24日(金)に、経済経営学類長賞表彰式(卒業生)が行われました。

〇学長賞

田邊友也さん 成績優秀者(総GPA最上位)

梶川一樹さん 令和4年公認会計士試験合格

〇学類長賞

佐々木駿さん、大浦幸太さん、南條凪沙さん、宮城佳奈さん、髙橋若沙さん、塚原涼さん 成績優秀者(総GPA上位)

相原一輝さん IELTSアカデミック Overall Band Score6.5 CEFR Level B2 認定

第33回「飯塚毅賞」表彰式が行われました

令和5年3月24日(金)に、「飯塚毅賞」表彰式が行われました。令和4年度は3名に同窓会長から「飯塚毅賞」が贈られました。

加藤涼々花さん(野際大輔ゼミ):ノンアルコール飲料の効率的なマーケティングの実現に向けて~潜在クラス分析によるセグメンテーション~

河野隼大さん(根建晶寛ゼミ):みなし配当税制の現状課題

手塚勇翔さん(佐藤寿博ゼミ):人口移動と大学進学