2024年1月

「アカウンティングコンペティション」で2チームが審査員特別賞を受賞しました


令和5年度「アカウンティングコンペティション」において、根建晶寛ゼミ2チームが学術的研究分野、実践的研究分野で審査員特別賞をそれぞれ受賞しました。アカウンティングコンペティションは、独自性、先行研究や雑誌記事等の丁寧な整理を行う論理性など社会人になってから必要な能力を養うことを目的とした会計学の全国的なプレゼンテーション大会です。全国から23大学,29ゼミナール,71チームの応募があった中で受賞しました。なお、今年度は初めてクイズ大会も開催され、チームAは全体で第2位の結果となりました。


〇受賞報告名:投資としての競馬分析    

 受賞チーム名(メンバー)

 根建ゼミナールチームA(佐藤大祐・鈴木翔英・鈴木慎弥・金山友・関根隆登・長谷川真大) 


〇受賞報告名:緑茶飲料の販売戦略

 受賞チーム名(メンバー)

 根建ゼミナールチームB (八重樫美空・武澤颯太・PHAM HUYNH NHUT HOA・駒形倫己・阿部徳輝・佐藤幹汰)


〇関連サイト: 第8回(2023)アカコン受賞チーム | Accounting Competition in 2023 (accocom.com)



今回、受賞した発表概要は以下のとおり。


 学術的研究分野で受賞したチームAのメンバーは、自分たちが普段から関心のある「競馬」と株式投資の両方に焦点を当てた分析を行った。当該チームは、「競馬はさまざまな情報から独自予想を立てて馬券を購入すること」「株式投資は企業業績や株価から投資意思決定を行うこと」に注目し、多様な観点からの分析と考察を行っている。競馬の世界は、「よそうはうそよ(なお、前から読んでも後ろから読んでも同じです)」と言われ、実に奥が深いと言われる。相対的な確率としては、一番人気を購入し続けることが可能性は高いのかもしれない。しかし、自身の予想が当たるかは、そう単純でもない。一番人気の馬を購入したあとに、人気以外の独自指標を用いて違う馬に予想をする等、独自予想を行う方が長期的には当たる確率が高まる可能性もあろう。こうした“独自予想”を行う投票行動は、株式投資で財務面のみならず、非財務面の双方に注目して意思決定を行う行動と類似する。

 チームAのメンバーは、上述の2市場(競馬と株式市場)類似性に焦点を当て、「人気のない馬(オッズの高い馬)を予想して馬券を当てるにはどうすればよいか」、大変興味深いリサーチクエスチョンを設定した。先行研究では、①.穴馬バイアス(馬券購入者がオッズの高い穴馬を過剰に好むことから、相対的に穴馬の馬券が割高になる。しかし、本命馬(オッズの低い馬)の馬券は割安になる)、②.競馬への投票行動の主観的確率(ある馬にベットされた賞金プールのお金の割合)と客観的確率(人気馬への投資)、③.掛け方の戦略(競争馬での掛け方の戦略は、株式市場と同様に、ファンダメンタル手法とテクニカル分析がある)ことを一部外国文献も含めて整理している。主な先行研究の整理後、当該チームは、2022年の中央競馬開催の芝重賞114レースを分析対象に、多角的な分析を実施した。具体的な調査項目として、人気だけでなく、距離、出走頭数、馬場状態、天候、騎手、脚質、過去10年間の6番人気以下1着数などである。AI予想に関する興味深いトレンドや競馬新聞の読み方も丁寧に紹介し、聞き手の立場にたってプレゼンテーションできたことも一定の評価を得た所以であろう。


 他方、実践的研究分野で審査員特別賞を受賞したチームBのメンバーは、緑茶飲料に関する日本企業の販売戦略について報告を行った。各社のマーケティングは、消費者行動に影響を与え、ひいては企業行動にもつながる。わが国企業の長年の課題として、技術力は高いがマーケティング力に乏しいことが指摘されてきた。近年では、デザイン変更による企業競争力の高まりが、産業界で顕著になっている。チームBは、プレゼンテーションの冒頭で、「清涼飲料水の中で、お茶系飲料は、最も生産量が大きいが、ペットボトル緑茶飲料は、価格や製品に大差がなく、コモディティ化がすすんでいる」ことを述べ、お~いお茶、生茶、伊右衛門、綾鷹の4商品の広告・マーケティングを丁寧に分析した。先行研究では、①.価値視点のパッケージ・デザイン戦略、②.製品リニューアルにおけるパッケージ・デザイン変更の効果、③.商品・顧客層別の広告効果分析に着目した内容を整理している。一連の整理の結果から、お茶系飲料を販売する上では味による差別化は難しく、製品の形態や付随機能での製品差別化とブランドの確率に注力している点を指摘している。

 その後、当該チームは、4商品のホームページから文章を分析し、どの単語が多く使用されているか調査した。まずは、最近注目されているテキストマイニング(文章から意味のある情報や特徴を見つけ出そうとする技術の総称)を活用した分析を該当班は実施した。第2に、質問紙の技法について学習し、該当班は、回答者の匿名性を保証し、年齢、性別、職業などを可能な範囲で明記し、227件のアンケートによる収集を実現した。片方の分析に偏らず、双方の分析を行い、客観性の高い分析結果を得ている。分析結果は、味や香りではなく、消費者の健康志向を色濃く反映させるものであった。上述以外にも、該当班は、各社のパッケージの時代ごとの変遷を非常に丁寧に整理し、X(旧Twitter)を使ったSNSマーケティング戦略をどのように行っているかを分析した。「商品専用のアカウントが存在し、リポストやハッシュタグによるプレゼント企画を中心とした宣伝が多い」としている。日本企業は、広告費という将来投資をいかに売上及び利益に連動させるかが課題であったと推察されるが、SNSを利用した効率的なマーケティング戦略を行うことで、少ない広告費で高い売上や利益を実現することも可能となろう。


 受賞した2チームは、リーダーである佐藤大祐さん、八重樫美空さんを中心に最後まで精度の高い報告になる努力をしていた。しかし、受賞できなかった2チームも個人的には、大変ユニークで優れた研究であったように思う。全4チームの一連の取り組みに改めて敬意を払いたい。学生に、アカウンティングコンペティションに代表されるチームプロジェクトに果敢な挑戦をさせている最大の理由は、各学生が自身の自己成長だけでなく、多くのメンバーの力を借りて互いに協力しあうことの重要性を説くためである。ビジネスの世界でもそうだが、1つのプロジェクトが完成するためには長期の時間がかかり、色々な人の継続的な協力が必要となる。特に、現3年生ゼミ長の関優汰さん、木皿瑠加さんの2名、副ゼミ長の蛯名帆菜美さんは、コンペティションに関わらず、全体のゼミ企画、個々人への裏側でのフォロー(同期、後輩、留学生、編入生など)をよくやってくれている。アカウンティングコンペティションの主催者、川野克典先生を中心とする日本大学の先生方、バックで支援してくださる本学事務局の皆様やチームBのアンケートに協力してくださった大変多くの方々に、改めて深く感謝申し上げたい。(准教授 根建晶寛)

根建ゼミのみなさんと井上学類長、根建准教授