2017年5月28日日曜日

荒知宏ゼミレポート:2017年4-5月の経済問題

現在どのような経済問題が注目されているのか。荒知宏ゼミでは,毎週,「日本経済」,「先進国経済」,「新興国経済に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし,このブログで月ごとに報告していきます。今回は2017年4月,5月の中から3つのトピクを選択しました。
※ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
※内容について誤りや問題がある場合はお知らせください。


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ヤマト、5~20パーセント値上げ(日本経済新聞 2017年4月25日)
 宅配便で5割のシェアを握るヤマト運輸は4月24日に9月にも宅配便の基本運賃を5~20パーセント引き上げる方針を固めた(ただし、ヤマト運輸はその後混乱を避けるために料金引き上げ時期を下半の開始日に合わせ10月1日に延期することを発表した 日に延期することを発表した 日に延期することを発表した 日に延期することを発表した 日に延期することを発表した 日に延期することを発表したi)。消費者が対象となる値上げは消費増税を除くと27年ぶりであり、アマゾンジャパンをはじめとするインターネット通販会社など割引を適用する大口顧客にはさらに大きい値上げ率を求める方針だ。値上げで得た資金を働き方改革や人材確保に充てる見通しで、2017年度に年度にグループ全体で1万人規模の採用を行うと発表もしている。ii 人手不足で人件費が高騰する一方でネット通販の増加により採算性の悪い荷物が増加したことや、未払いになっていた残業代の支払い、社会制度の変更に伴う支出の増加により業績が悪化したことが主な原因とみられている。iii また、宅配業務に占める再配達の割合が2割に達しており、ドライバーは重労働を強いられているのが現状である。iv 宅配業は今やインフラの一つといっても過言ではないほど広く社会に浸透しており、今後もより一層需要が高まっていくことが予測されるため問題の解決は急務であると考える。
 次に、ヤマト運輸の値上げが(1)提携している企業(2)他の運送業社(3)サービス業をはじめとする他の企業にどのように影響するのかを考えていきたい。
 (1)提携している企業については、通信販売業界への影響が一番に挙げられるだろう。5月24日現在、すでに当日配送中止や発送料金の引き上げなどの対応を始めた会社もある。また、顧客が留守の場合指定していた場所(例えばガスメーターボックスの上や自転車のかごの中)に商品を置いておくといったサービスを始めた会社もあるようだ。v このように通販業界側の過剰なサービス競争が抑えられ、より消費者の需要にあったサービスや料金設定に向かっていくことなるだろうと思われる。しかし、サービスの縮小や新しい配送方法についてはその影響について深く吟味しながら取り組んでいくべきだと考える。サービスの縮小によって失われる利益はどこでカバーするのか、新しい配送方法はどのようなトラブルの危険性をはらんでいるのか、気を付けてみていくべきであろう。また、顧客が指定したコンビニで荷物を受け取るといったサービスも今後広まっていくものと見られている。物流効率化のために有効な方法とみられているが、その際のコンビニへの影響についても検討すべきではないかと考える。確かに、コンビニとしては来店数増加につながるといったメリットがあると思われるものの、コンビニスタッフの負担増加や本当に収益の増加につながり得るのかについては検討すべきと考えられる。特に、大きい荷物を受け取りに来た場合、両手がふさがるため買い物はせずに荷物の受け取りのみを行うといった消費者は多いのではないかと思われる。
 (2)他の運送業社へ影響としてはヤマト運輸に追随する形での値上げが想定されおり、実際佐川急便は大口顧客向け運賃を引き上げる方針を打ち出した。vi ただ、ヤマト運輸とは違い消費者向けは据え置きとしてるが、佐川急便に限らず運送業界の今後の動向は注意深く見ていく必要があると考える。現状、足りない供給能力を補うために運賃を引き上げるというのは必要なことであると思われるが、運送業界は寡占市場といっても過言ではないという点は気を付ける必要があると思われる。加えて、今や宅配業は社会のインフラのようになっているのが現状であることからも価格設定において強い力を持っているとも考えられる。運送業者の今後の動向については今後より一層注意を向けていくべきであろう。
 (3)サービス業をはじめとする他の企業も人手不足を理由に値上げやサービスの縮小、生産性の見直しが図られるのではないかと考えられる。人手不足や労働環境について人々が注意を向けている中での値上げであったため、運送業でなくとも今回のヤマト運輸の値上げは状況の似通った業種、特にサービス業に波及していくと考えられる。過剰なサービスの見直しや生産性の改善が進み従業員の待遇が改善されれば、景気の改善につながるのではないかと考えられる。ただ、消費者への影響についてはやはりよく吟味するべきだと思われる。また、ここからは完全に私の私見となってしまうのだが、今回のヤマトの値上げをきっかけに新たに運送業界に進出する企業が現れるのではないかと考えている。例えば、コンビニのようなすでにある程度の配送能力を保持している企業があげられるのではないかと思われる。コンビニであれば一定の地域にある店舗を順にめぐり商品を配送しているが、その際ある店舗、あるいは倉庫から別の店舗へ店頭で受け取った荷物も一緒に配送するというようなことが可能なのではないかと思われる。運送用トラックの拡張や効率の良い荷物の配送方法を割り出す技術の投入、ドライバーの育成等のコストはかかるものの、普段の業務と並列して行えるため輸送コスト自体はかなり小さくできるのではないかと考える。また、長距離ライドシェアサービスの延長として代理配達のようなサービスも考えられるのではないかと思われる。
 人手不足が叫ばれる現在の日本にとって、運送業をはじめとしたサービス業全体の見直しが求められる時期が差し迫っているのかもしれない。
i  日本経済新聞 2017年5月19日 ヤマト基本運賃10月に引き上げ
ii  日本経済新聞 2017年5月3日 ヤマト、1万人採用
iii 日本経済新聞 2017年4月25日 日本型サービスに転機
iv  日本経済新聞 2017年5月4日 生産性改善の好機に
v   日本経済新聞 2017年5月20日 通販各社、成長の危機
vi  日本経済新聞 2017年5月2日 佐川も大口値上げ
(ミスターK)

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記事まとめ インド 物品サービス税
 インドのモディ政権は7月1日の物品サービス税(GST)の導入に向けて準備を進めている。現在、インドには15を超える間接税があり、製品やサービスが製造過程で州をまたぐごとに異なる税率で課税されている。検問所では入州税の支払いのためにトラックが最大3キロの列を作り、食品の劣化やコスト増につながっていた。それがGSTに集約されれば、重複課税がなくなり、州境を超える際の税務手続きが省かれ、工場や倉庫の立地も最適化しやすくなる。汚職や脱税の減少も見込まれる。
 海外からの直接投資の拡大も期待されている。インドは世界銀行の「ビジネス環境ランキング」で190カ国中130位、「納税のしやすさランキング」では190カ国中172位と事業活動がしづらい環境だ。GST導入により、経済活動が活発化し海外からの投資の誘致や産業育成につながると見込まれており、インド政府は経済成長率が8%に達する可能性があるとみている。
 しかし、GSTには課題もある。GSTは、企業が仕入先から納税証明を受け取れれば、企業は仕入先による納税分を差し引いた分を納税すればよいのだが、納税証明を受け取れなければ、仕入先による納税分が差し引かれず、税負担が膨らんでしまう。大手企業は仕入先に納税を促すようになるが、現地報道によると、中小企業の7割がGST導入に向けての準備を何も始めていない。29の州、22の公用語、900万の企業からなるインド経済で、GST導入ははじめは混乱する恐れがあるだろう。
記事
トランプ税改革より高難度 インドの物品サービス税 規制複雑でコスト膨大(SankeiBiz 2017.5.6)
インド税制改革、州境越え間接税集約 混乱の種も(日本経済新聞 2017.4.28)
(三浦)

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記事まとめ アメリカ 国境税
 トランプ政権が「国境税」の導入を見送る。輸入企業が、法人税負担が重くなることに猛反対したためという。「国境税」を導入すれば10年で1兆ドル以上の税収を期待できたのだが、見送られたことにより税収中立を確保するのが難しくなった。一方では日本から製品を輸入してアメリカで販売する日本メーカーへの打撃は回避されるという。
 「国境税」についてブリタニカ国際大百科事典(電子版)には「輸出入により商品が国境を出入りする際に賦課あるいは還付される租税。」とあった。また、「国境税」には輸入を抑制して、輸出を促進する効果がある。加えてアメリカは1968年にヨーロッパ共同体ECが導入してから「国境税」に批判的だったそうだ。約50年後の現在そのアメリカで「国境税」が見送られはしたものの共和党が導入を提案している。この変化を引き起こした原因や背景には何があったのか、トランプ大統領が法人税などの税率を引き下げようとしている動きの中で、税収中立をどのようにして確保していくかについても注目していきたい。
記事
「大規模」減税は一時的 米大統領税制改革案、国境調整税含まぬ可能性(2017/4/25  SankeiBiz)
トランプ政権が「国境税」の導入見送り 輸入企業が反対 日本への打撃は当面回避か(2017/4/26  SankeiBiz)
(佐々木)

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