2017年1月16日月曜日

昨年の11月・12月におけるマクロ的な経済問題(中村勝克ゼミによるレポート)

中村勝克ゼミによる好評の経済レポートです。


昨年(2016年)12月の中旬に大阪でインターゼミ(大阪市立大学および成蹊大学との合同ゼミ)があり、中村勝克ゼミは「ビットコイン」について報告してきました。この報告のため各ゼミ生はかなり勉強してきた様子で、ビットコインの技術的な内容だけでなく、ビットコインを通した信用創造の困難性といったマクロ経済学の問題にまで言及していました。各ゼミ生の潜在能力を垣間見させてもらった感もあり、当該ゼミの担当教員として、とてもうれしかった次第です。

さて、インターゼミに参加した関係で、ブログの方は一時中断してしまいました。当然ながら、その間も世界経済は待ってくれる気配さえなく、昨年終盤から混迷を一層深めてきています。ゼミ生がそのような混迷を十分に踏まえたかどうかは定かでありませんが、今回、それぞれ象徴的な次の3つのテーマが選ばれました。

日本経済に関連したところでは、トランプ氏によって風前の灯となった、というよりかは吹き消されたTPPの問題です。また、先進国の話題としてはFRBの利上げの問題を選択しています。最後に新興国の記事として選択されたのは、インドの高額紙幣に関する政策です。このインドの政策もいわば実験的な内容であり、新興・途上国の貨幣問題および貨幣政策の影響を考える上で、必ず留意しておかなくてはならないものです。

ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
内容については、基本的に学生の意見となります。大きな誤り等がある場合はお知らせください。
次回のアップは、2月の半ばを予定しています。



【日本経済】


TPP発行、不可能に
(朝日新聞・1123日、日経新聞・110日の記事参照)

トランプ次期米大統領は、昨年11月動画サイト「ユーチューブ」を通じて今月20日の就任初日から着手する6項目のうち、1番目に「我が国にとって災難になりうる」として環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を明言した。TPPの発行には米国の批准が不可欠で、現行のTPPは発行が不可能となる。TPPを成長戦略の柱としてきた安倍政権は根本的な戦略の見直しを迫られそうだ。

 トランプ氏は大統領選中、オバマ政権が進めてきた自由貿易政策が米国の雇用を奪うとして、TPP廃止を訴えていた。今回の公表は、トランプ氏が雇用政策を重視するとともに、米国に不利益をもたらすと判断した貿易政策は受け入れない意思を示したことになる。

 これに対し、TPPを成長戦略の柱とし、日米主導で中国への牽制を狙う安倍晋三首相は昨年のトランプ氏との会談でTPPへの理解を求めたとみられる。さらに、記者会見でも「TPPは米国抜きでは意味がない」と訴えた。しかし、その直後に離脱を表明されてしまった。また、昨年11月に閉幕したAPEC首脳会議でも、トランプ氏を念頭に「あらゆる形態の保護主義に対抗する」と首脳宣言を採択したばかりだった。

 トランプ氏は、大統領就任が近づくにつれ露骨な政治介入で米企業の投資計画を覆してきている。また15日にはトヨタ自動車がメキシコに新設する工場の計画撤回を求めた。このような状況をサマーズ元米財務長官は「米国の資本主義を永遠に傷つけかねない。最も不安な案件だ」と批判した。

 巨額減税などトランプ氏の経済政策は、「レーガノミクス」で貿易赤字と財政赤字が膨らみ、日米貿易摩擦を招いた80年代のレーガン政権を模している。米国発の貿易戦争の不安は拭えない。
(アーモンド)



【先進国経済(北米、欧州等)】

イエレン米FRB議長が来月利上げ示唆、「比較的早期適切」
(ロイター・1118日の記事他参照)

イエレン米FRB議長は1117日、議会合同経済委員会で、経済指標が引き続き労働市場の改善とインフレ加速を示せば、FRBは比較的早期に利上げする可能性があるとの認識を示していた。

そして、1214FRBは約1年ぶりの利上げに踏み切った。
先の議会合同経済委員会で、議長は、米経済は労働市場への新規参入者を十分吸収できるペースで雇用を創出していると述べるなど、米経済に対して総じて明るい見方を示していた。賃金の伸びの加速と個人消費の緩やかな増加の継続が、経済成長が弱含んだ上期から持ち直す一助になると指摘していた。また、中国、欧州経済の脆弱さを踏まえたうえで、主要リスクとされてきた海外経済についても安定するとの見方を示していた。

更に、議長は2018年の任期満了まで議長職にとどまる意向を示したほかに、トランプ次期大統領の経済政策により、雇用やインフレへの影響を考える必要があり、おそらく見通しを調整するとしていた。

なお、FRBによる今回の利上げ幅は0.25%である。加えて、市場予測では2回とされてきた来年2017年の利上げだが、最近では3回になる予想が大勢を占めている。最近のデータにおいて、米労働省が発表した昨年12月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が156000人増と、伸びは市場予想の178000人増に届かなかったが、賃金は大きく伸びており、労働市場の勢いが持続していることを示している。

日本にとって、FRBの利上げは円安株高に誘導するものであり、日本の輸出産業は業績が上昇すると見込まれる。
(玉の汗 小林)




【新興国経済(BRICS、アジア等)】

インド、高額2紙幣を廃止
(日経新聞・119日・16日、SankeiBiz1110日・25日の記事参照)

インド政府は119日、1000ルピー(1640)500ルピーの高額紙幣を廃止した。現在流通しているこれらの高額紙幣は12月末までに銀行か郵便局に持ち込み、利用可能な紙幣と交換するか、預金することで価値を存続できた。また、インド準備銀行(中央銀行)は、代わりに2000ルピーおよび500ルピーの新紙幣を発行した。

 インド政府の狙いはブラックマネーの回収だ。インドでは「地下経済」の規模が国内総生産(GDP)の2~4割に及ぶと試算されている。高額紙幣は偽札も多く、不正資金の温床になっていた。また、インドでは約5割の人々が銀行口座を活用していない。半ば強制的に銀行利用を強いることで、口座利用や貯蓄の拡大が見込め、資金の流れを把握しやすくなれば税収増加も期待できる。

 この発表を受けて、インドの大都市では大勢の市民が銀行のATMに殺到するなど混乱が広がった。廃止した紙幣は全発行紙幣価値の86%を占め、個人消費者は支出の98%を現金で支払っているためだ。

この深刻な現金不足で恩恵を受けているのが、電子決済業界だ。同国電子決済大手のペイティーエムには、高額紙幣廃止以降、魚売り、野菜売りから、人力車の運転手までさまざまな人が登録をした。ユーザー数は15000万人に達し、1日当たりの平均取引件数は700万人に上っている。

 しかし、やはり現金不足の影響は深刻だ。インド統計局は16日、16年度の実質GDPの成長率が前年度比7.1%になるとの予想値を発表した。これは、3年ぶりの低水準である。また、インド準備銀行によると、旧2紙幣は12月上旬までに12兆ルピー強が回収されたが、新紙幣は同月中旬までに6兆ルピー弱しか供給されていない。電子決済も、都市部では広がりを見せているが、農村部への広がりは限定的である。少なくとも3月までは紙幣不足が響き、消費が低迷するとの見方が多い。

(三浦大)

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