2015年6月12日金曜日

中村勝克ゼミ: 2015年5月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート


現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は5月中旬から6月初め(512日~62日)のニュースの中から3つの話題を選択しました。
日本経済については、安倍首相が、ADBと連携してアジアに13兆円のインフラ投資を行うことを表明したとの内容。先進国経済に関してはアメリカの利上げ観測に関する話題。新興国経済はインドネシアのインフレ抑制政策に関する話を載せました。また担当学生が積極的に簡単な分析を加えています。まだまだ完璧ではありませんが,参考にしてもらえればと思います。

ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。

内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。


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【日本経済】
首相「アジアに13兆円」
(日経新聞・522日の記事を参照)

安倍晋三首相は21日に第21回国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で、「質の高いインフラをアジアに広げたい」として、アジア開発銀行と連携し、アジアのインフラ整備に今後5年間で約1000億ドルを投じると表明した。
  インフラ整備は、新興国に非常に大きな経済成長をもたらす効果があると思われる。直接効果としては、インフラ整備の建設工事によって国内の雇用創出や建設材料などの需要が高まり、経済波及効果が働いて経済の発展するきっかけとなる。長期的な効果としては、インフラの整備によって、外資の誘致や自国産業の発展に良い影響を与える。アジアの新興国にとっては非常に大事な経済政策であると思われる。
  しかし、インフラ整備には外部経済性だけでなく外部不経済性もある。たとえば、インフラ整備は自然環境に少なからず悪い影響を与えてしまう。先進国の発展の歴史をみると、たくさんの教訓が残っている。同じ過ちを繰り返さないために、新興国はスピードだけを重視せずに、環境を配慮しながらインフラを整備していく必要がある。
  今のアジアでは、道路などのインフラ整備に100兆円が必要とされている。新興国独自の財力で自国のインフラ整備をしてくのはとても難しい。日本を中心としたアジア開発銀行や、中国が主導するアジアインフラ投資銀行は、非常に必要かつ有意義な存在と思われる。そのような国際的投資銀行を通じて新興国のインフラ整備に投資することが、何らかの形で日本国内の需要を高めて、国内の企業の投資意欲上昇などの良い経済効果を生むかもしれない。また他に、新興国への投資が日本のアジアでの影響力を高めるであろう。「アジアに13兆円」は非常に意義深い政策であり、引き続き注目していきたいと思う。(タツ)

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【先進国経済(北米、欧州等)】
FRB議長、利上げ「年内のどこかで」講演で 景気回復に自信
(日経新聞電子版・5月23日の記事を参照)

22日米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、ロードアイランド州で行われた講演で、「年内のある時点で利上げの最初の段階に進むのが適切だ」と述べた。米経済で焦点となっている利上げの時期について、22日は「ある時点」との表現にとどめ、具体的な時期に踏み込むことを避けた。
今年13月期の米実質国内総生産(GDP)がほぼゼロ成長だったことに関して、イエレン氏は悪天候など「一部は統計上のノイズ」と説明し、あくまで一時的要因が強いとする。一方、「数多くの逆風で回復が鈍化しており、それが見通しにもある程度の影響を及ぼす」とも語り、成長見通しを事実上下方修正した。
中期の景気回復には強気の見解を崩していない。消費や投資の減速で当面の成長鈍化は避けられないが、一時的要因が薄れるに従い景気データはよくなるとする。金融引き締めが後手に回ると「景気加熱のリスク」につながりかねない」と述べ、年内の利上げに改めて意欲を示した。
利上げを急げば米国だけでなく世界的な景気の回復に水を差し、利上げが遅れると、物価上昇に拍車を掛けて、目標とする2%の上昇率を超えた急激なインフレを起こす懸念がある。物価や賃金の上昇、雇用の回復が当面大事になってくるだろう。時期にかかわらず、利上げ開始時には金融市場や景気に予想以上の混乱や悪影響を及ぼす可能性がある。依然として米国の出口戦略に注目したい。(レオ)

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【新興国経済(BRICS、アジア等)】
インドネシア、インフレ率引き下げ目指す意向表明 競争力強化で
(ロイター・527日の記事を参照)

インドネシアの政府当局者は27日、インフレ率を引き下げて近隣の東南アジア諸国の水準に近づけたい意向を表明した。「インフレ率引下げ目指す」という言葉は聞き慣れない表現のように思われる。なぜインフレ率の引き下げを目指すのか。
 まず、インフレ状態であることのメリットから考えよう。現在の日本経済をみても分かる通り、企業の業績の伸びは従業員の所得の上昇につながり、家計の消費の上昇につながる。家計の消費の上昇は再び企業の業績の伸びにつながるのだが、企業は従業員の所得の上昇と家計の購買力の高まりから高い価格で商品を売り出す。これが物価の上昇しているインフレの状態であり、連鎖的に企業と家計が潤う環境が出来上がるために良いとされる(経済不安から通貨需要が減少し、通貨価値が減少することで発生するインフレもあるが、今回は取り上げない)。
 一方、インフレにはいくつかのデメリットも存在する。その一つが、国内で生産された商品が海外で割高になり、輸出競争力が低下することである。インドネシアの4月のインフレ率は6.8%だったが、同月の東南アジア諸国ではマレーシア1.8%、フィリピン2.2%、シンガポール0.04%、タイ0.25%だった。このインフレ率の差がインドネシアのASEAN域内における競争力の低下となって現れている。つまり、値段の高い同国の商品が周辺国からの需要低下に直面しているため、中銀総裁は、2018年のインフレ率について2.54.5%を目指すことと、今後数年間で近隣諸国水準並みに下げたいことを述べた。
 しかしインドネシアの通貨であるルピアは年初来対ドルで約6%も下落しているほか、アメリカの利上げ観測もあって東南アジアの経済状況は不安定である。さらに522日付のロイターの記事では東南アジアでの長く続いた低金利が借り入れブームを呼び、現在の対外債務の急増につながっているという。今後同域は、成長をするとしても、変動の大きい安定しない成長が見込まれるのではないだろうか。(おいとま)