2015年6月12日金曜日

中村勝克ゼミ: 2015年4月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。
なお「4月の報告」ですが、文章の修正・検討の関係およびゼミのスケジュールの関係からブログアップを遅らせて、「5月の報告」と一緒にアップすることにしました。そのため6月になっていますが、以下,41日から512日の期間に発表された記事のレポートを掲載しています。日付等に気を付けてください。
日本経済についてですが、異次元の量的緩和政策に関するものです。4月段階で、日銀の政策について“新しい懸念”の生じていることが分かります。また先進国経済に関してはドイツの金利の話です。4月の中ごろドイツの長期金利が著しく下がり、「10年国債もマイナス金利になるのか?」と騒がれました。結果的にドイツの10年国債はマイナスとなりませんでしたが、以下のまとめから当時の状況が読み取れます。新興国経済の話題は、アメリカの利上げの影響に関するものです。5月の報告でも取り上げていますが、アメリカの利上げについては未だ多くの人が警戒をしています。
なお、今回も各テーマに関して担当学生が簡単な分析を加えています。不十分な部分もありますが、敢えて彼らの考えや文章を尊重しました。ちょっとした参考にしてもらえればと思います。

ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。

内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。

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【日本経済】
異次元緩和への新たな懸念 国債の売り手が減少
(日経新聞電子版・201551日、8日、11日、20141030日、201345日/ロイター・20141031日/日本銀行公式Webサイト 参照)

日本銀行が異次元緩和に伴って購入する国債の売り手が減少している。日銀が国債買い入れを入札する際に、日銀が買いたいとした額に対する金融機関が売りたいと申し出た額の比率は、201513月期に2.7倍となった。これは異次元緩和導入後最低となる比率である。
日銀は現在、金融政策として異次元緩和を行っている。その手法は、国債を購入し(国債買い入れ)、おカネの中核である「マネタリーベース」を増加させるというものである。この手法で、日銀の保有する国債の残高が年間80兆円となるよう国債を購入している。
さて、国債を手放そうとしない金融機関の一つは銀行だ。銀行は取引を行う際に一定量の国債を担保として保有する必要があり、その下限に達しつつあるために売りの申し出が減少している。このまま日銀に対する「国債を売りたい」という申し出が減っていけば、日銀が国債を買いたいとする入札予定金額に達しない (金融機関がいくらお金を積まれても国債を売ろうとしない) 「札割れ」という状況が発生する。札割れが発生した場合には、金融機関には既に十分なお金が行き渡っていると言える。このような状況に直面した場合、金融緩和を続行することに効果があるとは言えないだろう。
日銀は20134月に2年間で2%の物価上昇を達成するべく異次元緩和を導入した。この4月でちょうど2年が経過したが、51日に公表された日銀のリポートによると、異次元緩和による消費者物価指数の上昇は0.6%であるとのこと。また、このリポート内には「マネタリーベース」という言葉が見当たらず、異次元緩和によるマネタリーベースの増加がどのように物価上昇・景気回復につながるのかが不明確にされていた。そのため金融政策について改めて様々な疑念を呼び起こしている。
異次元緩和における国債買い入れに暗雲が立ち込め始めたが、日銀はどのような政策をとっていくのか。今後の動向をより注意深く見ていく必要がある。(市場の失楽園)

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【先進国経済(北米、欧州等)】
10年債利回り、初の0.1%割れ マイナス金利視野に
(日経新聞電子版・4月16日の記事を参照)

欧州中央銀行(ECB)が実施する量的緩和策が、欧州国債の金利低下を一段と進めている。16日の欧州債券市場において、指標となるドイツの10年物国債利回りが一時0.07%台で取引され、初めて0.1%を割り込んだ。また、9年物国債が初めてマイナスの利回りで取引された。ECBの国債買い入れとともに、依然として先行きの見えないギリシャの債務不安がリスク回避の動きを強くしている。
ECB39日に量的緩和策を開始し、今月10日までの約1ヶ月間に616億ユーロ(約77000億円)の国債などのユーロ建て資産を買い入れた。期間の短い国債の利回りではすでにマイナスとなっており、投資家や金融機関はプラスの利回りが確保できる長期の債券に資金を移している。しかしECBのドラギ総裁は量的緩和策の縮小に否定的な考えを示していることから、ドイツ長期国債の金利低下を後押しし、10年債の利回りにおいてもマイナス化が視野に入るとの見方が出ている。
マイナス金利とはつまり、国債を保有していれば損失が発生する事を意味する。もしマイナス金利で誰も国債を買わなくなれば、国債価格が暴落する事になる。しかしドイツではマイナス金利になって以降も、金融機関は国債に投資しており、暴落などの現象は見られない。国債がマイナス金利になっているにも関わらず、それでも購入が絶えないのはなぜなのか。
様々な理由が考えられるが、そのうちの一つとしては、「タンス預金(現金でおいておくこと)にするより低コスト」であることが挙げられる。一般的に個人が投資をする場合には、金利がマイナスであれば、家で現金でおいておく(タンス預金)ことができる。しかし、金融機関など保有する金額が大規模になる場合、現金で保有することはセキュリティなどの面で大きなコストになってしまう。国債がマイナス金利でも、現金のまま保有するコストよりも安ければ、買った方がいいという考え方である。
ECBが今後も毎月600億ユーロのペースで買い入れを継続していくと表明する中で、ドイツを含めた欧州の債券市場がどのように変化していくのか注目したい。(レオ)

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【新興国経済(BRICS、アジア等)】
流動性低下で金融ショック増幅の恐れ、新興国に不安=IMF
(ロイター・416日の記事を参照)

IMF15日、半期に一度出される、国際金融安定性報告書において、米国の利上げによって、流動性が低下し、金融市場が不安定になる恐れがあると指摘した。
なぜ、米国の利上げが問題なのか。それを考えるためには前段階として、現在の世界的な低金利の流れを受けた過剰流動性に目を向ける必要があるだろう。欧米をはじめ日本など先進国は低金利の傾向にある。最近では経済成長が著しかった中国でも成長が落ち着き、低金利化の動きがみられる。そして先進国における世界的な低金利は、市場に過剰流動性を生み、金融市場では先進国、新興国問わずお金が溢れている状態にある。
 そのような中、米国が金利を上げれば米国にお金が集中することになり、市場における流動性が急激に下がることになる。このことは市場規模の小さい新興国において特に大きな影響を与え、新興国にお金が回りづらくなるのである。報告書の言う、「ボラティリティー(証券などの価格の変動性)が急激に増大するような状況に陥りやすくなる」状態である。
 また、加えてIMFはそのような状況が、昨年10月の世界経済の減速懸念による米国債利回りの急低下や、今年1月のスイス国立銀行(中銀)の対ユーロ相場上限撤廃によるスイスフランの急騰のような市場の混乱を起こしかねないことを指摘した。更に、銀行の企業向け融資比率の高いナイジェリア、ペルー、トルコ、ウクライナは、すでに商品(コモディティ)価格の下落やドル高の打撃に苦しんでおり、企業や銀行が抱える既存の問題を悪化させることを言及した。
新興国は経済的に未発達であり、先進国の経済的行動の一挙手一投足に影響を受けかねないため、新興国経済を考える際は、併せて先進国経済に気を配ることが不可欠といえよう。特に、経済大国の米国は金利変動だけでここまでの影響があるので、常に注視する必要があるだろう。(おいとま)