2015年1月19日月曜日

中村勝克ゼミ:2014年12月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは、毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は年末年始(12月2日~1月6日)のニュースの中から3つの話題を選択しました。

日本経済については、今回「15年度予算 過去最大」という年末の記事。1月になってからも関連ニュースが報道されています。先進国経済に関しては11月に引き続きユーロ圏の量的緩和の可能性に関する内容で、「ECBが訴える「原油安」の不安と「量的緩和」の必要性」です。最後の新興国経済は「AEC準備、ASEANに温度差 利害不一致も表面化」というタイトルで、今後ますます注目されるAECを解説しています。

※ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
※内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください

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【日本経済】

15年度予算 過去最大(日経新聞および読売新聞・12月23日の記事を参照)
政府は昨年12月22日の経済財政諮問会議で、2015年度予算編成の基本方針を示した。一般会計の歳出総額は97兆円台と、2014年度当初予算を2兆円前後上回り過去最大となる。高齢化に伴い、医療や介護といった社会保障費が膨張し続けているのが主な原因だ。

歳出において最も多い社会保障費は31兆円台に達し、14年度当初予算の30.5兆円を上回る。このうちの子育て支援や難病対策といった社会保障の拡充も歳出が膨らむ要因となる。地方交付税交付金については地方税収が大幅に伸びる見通しとなったことを受け、14年度当初予算の16.1兆円から7年ぶりに15兆円台にまで減額する。

一方、新たな国債発行額は36兆~37兆円になる見通しで、6年ぶりに当初予算段階での30兆円台を目指す。15年度の税収は、景気回復で法人税や所得税を中心に14年度より1兆~2兆円ほど増える見込みで、政府はこの増収分を使うことで国の借金である国債の発行額を減らす考えだ。

政府は、財政の健全性を示す基礎的財政収支の赤字額の国内総生産に占める割合を、15年度に10年度比で半減させる目標を掲げている。この目標について安倍首相は諮問会議で、「達成するよう最大限努力していく」と強調した。消費税増税の先延ばしで財源を確保できないなか、政府の財政健全化目標を達成するには、介護報酬の引き下げや生活保護費の効率化などに踏み切ることが必要だ。

日本の財政に対しては、消費税増税の先送りにより米格付け会社が日本国債を格下げするなど信頼が低下しつつある。新規国債の発行額を減らすことに加え、歳出の削減をどこまで積み上げられるかが課題となる。(大石)

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【先進国経済(北米、欧州等)】

ECBが訴える「原油安」の不安と「量的緩和」の必要性(ロイター・12月4日・31日・1月5日の記事を参照)
2014年12月末、欧州中央銀行(ECB)のブラート専務理事は原油安によりインフレ期待が不安定になるという懸念から、物価安定のために量的緩和(QE)の開始が必要になる可能性があるとの認識を示した。専務理事は現在の金融緩和では景気の回復を十分に促せない恐れがあると指摘し、特に原油安により「2015年のかなりの期間」、インフレ率がマイナスになる可能性があり、原油安に伴う価格競争で「インフレ期待が不安定」になりかねないとの認識を示している。

これまでにも、ドラギ総裁が会見で原油安の悪影響について異例の言及を行ったことから、ECBには原油安を材料としQE反対派を説得する狙いがあるとの見方が出ていた。そして今回専務理事が原油安によるインフレへの影響を改めて確認すると同時に国債買い入れについてこれまでより具体的に考えを示していることから、ECBが原油安による影響を根拠としてQE導入に踏み切る動きはより鮮明になってきている。

一方で反対派として中心的立場にあるドイツだが、原油価格の下落が物価の伸びを抑え、2014年12月のEU基準消費者物価指数速報値は過去5年で最も低い伸びとなった。これまでドイツでは原油安について、11月の業況指数の上昇に寄与していたことなどプラスの影響が注目されていた。そのため、負の側面を強調するECBの狙い通り説得の根拠となるのかについては疑問があったが、今回の統計によりマイナスの影響が認識されたことでようやく原油安の影響を根拠としてQE導入へ踏み切れる状況になったと言える。

ECBは今月22日の理事会でいよいよ追加緩和の導入に踏み切ると見られている。様々な問題を抱えるユーロ圏経済であるが、まずはインフレの実現に向けて量的緩和が期待通りの働きをするかに注目が集まる。2015年、新たな金融政策が効果を発揮し、ユーロ圏経済が力強く成長していくことを期待したい。(bourbon)

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【新興国経済(BRICS、アジア等)】

AEC準備、ASEANに温度差 利害不一致も表面化(SankeiBiz・1月1日の記事、日経新聞・12月8日・21日の記事を参照)
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、2015年末に、ASEAN経済協力体の(AEC)発足を控える。AECでは域内のモノやヒト、サービスの各分野の自由化を目指し、さらには世界市場での地位向上を図る。一方で、加盟各国の経済状況の違いにより、参入に対する温度差が生まれている。

肯定的にとらえているのはタイ、カンボジアである。タイは国内経済を活性化させ、域内各国への投資を拡大し、ビジネス面での連携強化を図る。他にも国境を越えた物流の活性化を見越し、輸送インフラを整備や国外企業の投資の拡大を推進していく。また、カンボジアは低賃金が功を奏し、AECによって2015年~2025年の間に国内総生産の19.9%の押し上げ効果が得られるという評価があった。

一方で、不安を抱える国も存在する。AECに対して肯定的だと述べたカンボジアを含め、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピンといった国々は発足に向けた準備が不足しているとされ、乗り越えるべき課題が多くあるため、予定通りの今年末のAECの発足は困難であるという見解もある。また、インドネシアは広い自国市場への他国の一方的進出を懸念する。その他、先行して関税撤廃を行っていたシンガポール、マレーシア、ブルネイは発足を冷静に迎えようとしているなど、各国の態度は様々だ。

ASEAN各国は今年末のAEC発足に向け、調整をしていくことが必要になるだろう。しかし各国の状況の変化は著しい。例えば2015年、インドネシア、ベトナム、カンボジアで日額最低賃金が2~3割上昇するという報道もある。また、マレーシアは原油輸出への依存が高く、近頃の原油安がマイナス影響となっている。ASEAN各国は刻々と変化する経済状況、社会状況に対応しながら準備を進めていく必要があるだろう。(おいとま)