2014年12月18日木曜日

中村勝克ゼミ:2014年11月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは、毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は11月(11月4日~12月2日)のニュースの中から3つの話題を選択しました。


今回、日本経済については「急激な円安 企業警戒」という記事で、この記事から11月の初めにも円安のマイナス面が強調されていることが分かります。先進国経済に関しては「ユーロ圏経済の脆弱な成長「量的緩和」実行へ」。また新興国経済は「OPEC、陰る調整機能 原油減産見送り、6月から3割下落」です。いずれも、現在および今後の世界経済を見る上で重要な情報と言えます。

※ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
※内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。

************************************************************

【日本経済】

11月8日]急激な円安 企業警戒(読売新聞、日経新聞参照)

東京証券取引所に上場する企業の2014年9月の中間決済が11月7日にピークを迎え、全体として業績は堅調だった。しかし、最近の急激な円安に対する警戒感が高まっている。

11月の始めに決算を発表した企業の記者会見では、円安が今後の業績に与えるマイナス面を懸念する声が続出した。中間決済(4~9月)の前提となった為替水準は、平均すると前年より4円程度円安の1ドル=103円前後だった。それが、日本銀行が10月31日に決めた追加の金融緩和によって円安が進行し、12月4日には1ドル=120円台を記録。今後も1ドル=116~122円で推移すると見られている。

中小企業や内需型の非製造業にとって円安の恩恵は小さい。部品などの輸入コストが増大するためだ。円安による輸入コストの上昇リスクは、原油価格の下落が緩和しているが、原材料のコスト上昇は避けられない。原材料価格の上昇を小売価格に転嫁する値上げラッシュが消費を冷やすことも懸念されている。

一方、海外で製品を販売する企業にとって円安の進行は業績をさらに上向かせる要因となる。中間決済では税引き後利益についてトヨタ自動車、マツダ、スズキ、富士重工業、三菱自動車の5社が中間期としてこれまでで最高となった。消費税率引き上げ後の国内販売は不振だが、円安が補うことで2015年3月期も好決算になる見込みだ。

中間決済の結果から、円安の追い風を受けた自動車、電機、機械、精密が好調な一方で、原材料のコスト上昇に直面した石油、繊維が不調、小売りやサービス業は苦戦といった傾向が見られ、業界ごとに差が出ている。輸出主導型の製造業と、国内の需要に依存する小売りや中小企業との間で、今後さらに格差が広がることが懸念される。(大石)

************************************************************

【先進国経済(北米、欧州等)】

[11月15日ほか]ユーロ圏経済の脆弱な成長「量的緩和」実行へ(ロイター、日本経済新聞、ブルームバーグ参照)

欧州連合(EU)が11月14日に発表した7-9月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)速報値は、前期比0.2%増となり、前四半期の0.1%からわずかに拡大した。

域内経済において主導的立場にあるドイツは2期連続マイナス成長で景気後退(リセッション)入りすることが一部では予想されたが、消費支出の堅調な拡大が成長を押し上げ、国内貿易もわずかながら寄与しかろうじてマイナスを回避した。

ユーロ圏経済はゆるやかに拡大を続けているものの経済が弱いことに変わりはなく、今後新たな景気刺激策が必要となる可能性も依然残されている。エコノミストの間では、成長が弱い上に年末にかけて経済が再度減速する可能性が高いことから、欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を含む一段の対応策を迫られるものとみられる。

こうした状況を受けECBは、現在、国債を大量に買い取る量的緩和に向けた準備に入っている。ユーロ圏の10月の消費者物価上昇率は前年同月比0.4%にとどまり、政策目標となる2%近辺を大幅に下回る。11月21日の講演でドラギ総裁は「物価上昇率を遅滞なく政策目標に戻すことが重要だ」と強調すると共に、「やるべきことをやる」と表明し追加緩和への強い決意を示した。実施の時期について明言はされていないものの来年1月に行動を起こすことが予測されている。

しかし量的緩和については理事会での反応が割れており、反対勢力が強いことで実行に踏み切れていないのが欧州の現状である。特に反対派の中でも中心的立場にあるドイツが、この状況と量的緩和の効果をどのように評価するのかが問題となる。過去にハイパーインフレを経験しているドイツは、量的緩和におけるリスクを警戒し慎重な姿勢を保っている。

ECBにとってドイツを説得へ導くことが実行への鍵となり得るが、果たして説得できる材料がECBにあるのか、反応を押し切り実行に移すのか、来年以降の動きに注目が集まる。いずれにしても追加の措置が必要である状況に変わりはなく、ECBはその効果とタイミングについて慎重に判断し実行に移していくべきであると言える。(bourbon)

************************************************************


【新興国経済(BRICS、アジア等)】

[11月29日ほか]OPEC、陰る調整機能 原油減産見送り、6月から3割下落
(産経新聞:22日、29日、毎日新聞:12月1日、Newsweek:12月2日参照)

原油の値下がりが止まらない。11月27日、石油輸出国機構(OPEC)の総会で、サウジアラビアが中心となって原油価格維持のための減産に反対したことで、減産が見送られることが決定した。アメリカのシェールオイル増産を背景に、原油価格は6月の前回の総会から3割ほど下落している中での決定であった。その原因は果たして何なのか。

主としてはアメリカのシェール潰しが指摘されている。サウジアラビアで原油を生産するのに比べてアメリカでシェールオイルを生産するのはコストが高く、価格競争力でみるとサウジアラビアの原油のほうが優位にある。アメリカでシェールオイル生産の採算があわなくなるまで市場価格を下落させることで、シェールオイルを原油市場から排除しようという狙いだ。

一方、アメリカとサウジアラビアが原油下落競争をすることで、政治的に敵対関係にあるイランやロシアに対して圧力をかける狙いがあるとの見方もある。例えばアメリカとイランは核交渉を行っているが、核使用を譲らないイランと、同国の石油輸出先を限定するなどの制裁を加えているアメリカの間で交渉は難航。イランにとって原油安が大きな打撃となっている。エネルギー輸出に頼るロシアもウクライナ問題などが重なり、原油安によって苦しめられている。

他にも考えられる原因はあるが、確かなことは一連の原油価格下落が国際的に影響を及ぼしていることである。原油安により国内経済が活性化する国があるなか、石油埋蔵量世界一を誇りながら石油の価格競争力に弱いベネズエラでは金利が急騰するなど、デフォルトの危機に見舞われている。

今後、一定期間は激しい価格競争が起こるであろうが、そもそもエネルギー資源が有限であることを忘れてはならない。いずれにしろ、今後の国際情勢を含めたエネルギー市場を見守る必要があるだろう。(おいとま)


提供:中村勝克教授