2014年11月20日木曜日

中村勝克ゼミ:2014年10月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは、毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は10月(101日~114日)のニュースの中から3つの話題を選択しました。

11月に入って国内外ともにマクロ経済はダイナミックに動いています。ただ,今回取り上げている内容は,現時点であえて振り返り再確認しておきたいものと言えます。

日本経済では、1031日報道の「日銀、追加緩和を決定 資金供給10兆~20兆円拡大」という記事。先進国経済に関しては10月末の「米FRB、量的緩和を終了」という解説。新興国経済は、11月初めの「ウクライナ、ロシアとガス合意にも両者に溝」というロシアとウクライナの微妙な関係を表す記事となります。
ゼミにおける議論をベースにしているためピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。

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【日本経済】

 1031日]日銀、追加緩和を決定 資金供給10兆~20兆円拡大 (日経新聞、毎日新聞、読売新聞参照)

日銀は1031日に開いた金融政策決定会合で、追加金融緩和策を決めた。年60兆~70兆円のペースで増やすとしていたマネタリーベース(資金供給量)を、約80兆円まで拡大する。中長期国債の買い入れペースを年約80兆円と、現状の約50兆円から約30兆円増やし、平均残存期間もこれまでの7年程度から、今回710年程度に最大3年程度延長することを決めた。

昨年4月に異次元緩和を導入後、初の追加緩和となったが、黒田総裁は追加緩和に踏み切った理由を「デフレ心理からの転換が、遅れるリスクがある」からだと説明した。

日銀は同日の決定会合で中長期の経済見通しを示す「展望リポート」も発表した。景気のもたつきを反映し、14年度の成長率見通しは7月時点の1.0%から0.5%に下方修正。14年度の物価見通しも1.3%から1.2%に、15年度も1.9%から1.7%に引き下げたが、16年度は2.1%で据え置き、追加緩和の効果で「15年度ごろに物価上昇率が2%に達する」とのシナリオは維持した。

日銀が追加緩和を決めたことで、東京金融市場では日米の金利差拡大への思惑から円を売る動きが広がり、急速に円安・株高が進んだ。追加緩和の効果が今後も続くかどうかに注目が集まっている。

ただし、追加緩和がどこまで景気や物価を押し上げるかは見通しにくい。金利が一段と低下すれば、円安に拍車がかかる可能性が大きく、行き過ぎた円安は輸入する商品の価格を押し上げ、個人消費を一段と冷やす懸念がある。また日銀の国債購入が政府の赤字の穴埋めと受け止められれば、国の信用が疑われ、国債が売り込まれるリスクもある。日銀はさらなる異次元の金融緩和に踏み込んだが、効果と副作用を常に点検する必要があるだろう。(大石)

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【先進国経済(北米、欧州等)】

 1030日ほか]米FRB、量的緩和を終了(参照記事|CNN1030日、日経新聞(電子版):1030日、31日、ブルームバーグ:1029日)

1029日、米連邦準備理事会(FRB)が量的金融緩和の終了を決定した。量的金融緩和はリーマンショック以降の2008年から実施され、景気刺激策としてゼロ金利政策とともに、6年に及び米国経済、世界経済の下支えとなる補助輪的役割を果たしてきた。

量的緩和の終了は、雇用状況の改善と景気回復を背景にした措置と考えられる。実際、米国の景気は緩やかながら回復を続けており、一時10%に達した失業率は5.9%に改善されている。現在の失業率は、量的緩和政策の開始(200811月)以来最低の値であり、リーマンショック前の水準に戻っている。

こうした米国の動向は、株式市場をはじめとする金融市場に著しい効果を与える。ニューヨークのダウ平均株価は先月17000ドル台まで上昇し、最高値を更新した。ただ一方で、FRBが一部の株価が値上がりしすぎていると指摘したように、最近ではバブル再来を懸念する声が高まっていた。その点からすれば今回の量的緩和終了の時期は、FRBが早い段階でバブルを阻止しようとした意図もあるといえる。

発表された声明で、FRBはゼロ金利政策について「相当な期間は続ける」という表現をし、利上げのタイミングは雇用の改善や物価の動向などの経済データを加味して判断すると繰り返すにとどまった。世界経済に与える影響の大きい米国経済、そのもうひとつの補助輪であるゼロ金利政策がいつ転機を迎えるのか、「相当の期間」がいつまでになるのかに今後一層注目が集まる。(レオ)

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【新興国経済(BRICS、アジア等)】

 11123日]ウクライナ、ロシアとガス合意にも両者に溝(ロイター、日経新聞(電子版)ブルームバーグ参照)

1030日、ロシア、ウクライナ、欧州連合(EU)による閣僚級協議は、6月から停止されているウクライナへの露産ガス供給を冬季限定で再開することに合意した。これによりウクライナの今冬のガス不足は解消される見通しで、ガス消費の3割をロシア産に依存するEUもガス不足に陥る可能性は小さくなった。

今回の閣僚級協議では3者が譲歩した形になっているが、ウクライナ政府とEUはロシア側の要求を一定程度受け入れざるを得なかったというのが現状だ。というのもウクライナ政府とEUはウクライナ東部やクリミア半島の問題でロシアを厳しく批判しており、今回のエネルギー問題をそれらの問題と切り離さなければ、解決の糸口が見いだせないと見たからだ。一方で今回の合意が冬季限定という暫定的なものであることから、エネルギー問題が来春以降再燃する可能性もある。

また112日にはウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で実効支配を強める親ロシア派武装勢力による独自の「首長・議会選挙」が行われ、いずれの州でもウクライナからの分離独立とロシア接近を強める親ロシア派が選出された。ウクライナのポロシェンコ大統領と欧米諸国は選挙結果を認めない考えを示しているが、ロシア外務省は「住民の意思を尊重する」との声明を出し、結果を容認する構えだ。

このようにエネルギー問題以外では、ロシア側とウクライナ・欧米側との溝は深まる一方であり、今回の合意が「ロシアとウクライナの緊張緩和に向けた最初の兆しになり得る」(EUのエッティンガー欧州委員)ものであったとしても、予断を許さない状況に変わりはなく、今後の動静に注視していく必要があるだろう。 (脱忘れん坊)