2014年8月4日月曜日

中村勝克ゼミ:2014年7月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは、毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は夏休み直前なので短く、7月1日から7月22日のニュースの中から3つの話題を選択しました。

日本経済では、7月12日報道の日欧米の金融市場に関する「日米欧で社債ラッシュ」という記事を取り上げています。先進国経済に関しては、アメリカ経済の状況とFRBの動きをまとめた「米経済底堅く 加速する利上げへの動き」という解説。新興国経済については、7月16日の「BRICS「新開発銀行」を発足へ」という開発金融の国際的動きを報じたものとなります。


※ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
※内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。

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【日本経済】

[7月12日]日米欧で社債ラッシュ (日経新聞(電子版)参照)
日米欧などの主要国の金融緩和を背景に、世界の企業が社債発行を増やしている。

トムソン・ロイターの集計では、1〜6月の社債発行額は1兆7700億ドルとなり、下半期も同規模で発行された場合、年間発行額は過去最高となりそうだ。

米国では5年債、10年債ともに金利が低水準に決まり、有名企業が50億ドル以上の大型起債に踏み切った。欧州でも仏ケーブルテレビ企業の投機的格付け社債に資金が集まり、108億ドルの大型の社債となった。日本では5年債であれば年利0.3%程度で発行されるケースが多く、今年社債を発行した企業の約9割が1%以下の金利で資金を調達した。

社債は返済期日が5〜10年と長いケースが多く、経営環境や金融情勢が悪化してもすぐに返済に迫られず、財務の安定に繋がる。しかし一方で、投機的格付けの利回りは過去最低水準にあり経済環境が悪化した場合、投資家が大きな損失を抱える恐れがあると、世界の社債市場で過熱感を指摘する声も増えている。(lingo)


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【先進国経済(北米、欧州等)】

[7月17日ほか]米経済底堅く 加速する利上げへの動き (参考記事|ロイター:6月18日、25日、7月4日、14日、17日、ブルームバーグ:6月4日)
第1四半期の米国の国内総生産(GDP)は前期比-2.9%と、5年振りの大幅な減少となった。大きな要因の一つは経常赤字の拡大である。第1四半期の経常収支は2012年第3四半期以来で最大の赤字となった。米経済の先行きが懸念される内容であるが、前向きな方向に捉える見方もある。

米国は4月に過去2年間で最大の貿易赤字を記録したが、このとき輸入額が前月から6.9%拡大したのに対し、輸出額はほぼ変わらなかった。このことをあるエコノミストが次のように分析した。

「輸入の増加は米経済が拡大しつつあることを示している。一方で輸出額がほとんど変わらなかったことは諸外国が相対的に弱いことを示唆している。」つまり今回の赤字の拡大は米国と諸外国との経済成長の差を反映しているとする見方である。これが正しければ米経済は今後大きく回復へと向かっていくことになる。

それを裏付ける内容の発表が7月に行われた。6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が28万8000人増加し、失業率が6.1%まで低下した。加えて6月には卸売市場でインフレの傾向が見られ、鉱工業生産は4年振りの高い伸びを記録している。いずれも米経済の堅調さを示しており、今後も経済が拡大を続けると予想するのに十分な内容であると言える。

こうした労働市場をはじめとする大幅な改善を背景に、米連邦準備理事会(FRB)当局者の間では、利上げ時期の前倒しに関する協議が加速している。セントルイス地区連銀のブラード総裁は2015年第1四半期に利上げを開始するべきだと考えており、さらに、今年第1四半期に大幅な落ち込みを見せた米国GDPが確実に回復したと確信された場合は、利上げ開始を前倒しすると示唆した。

事実、米経済は今予想よりも順調に回復の兆しを見せている。利上げはリスクを伴い、そのタイミングは極めて重要だが、経済が力強さを増している今、FRBはその時期を早めるという判断へと確実に向かっていくだろう。(BOURBON)


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【新興国経済(BRICS、アジア等)】

[7月16日]BRICS「新開発銀行」を発足へ (ロイター、日経新聞(電子版)ブルームバーグ参照)
15日、ブラジルで行われていた新興5か国(BRICS)の首脳会談において、途上国支援を目的とする開発銀行の発足を決定した。資本金は5か国が100億ドルずつ拠出し、500億ドルの予定だ。

「新開発銀行」の本部は上海に置かれることが決まっている。開発銀行を設立した背景には、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった欧米主導の金融システムに対抗し、新興国の発言権の拡大など、現状を打破しようとする狙いがあるようだ。

しかしBRICS各国は「欧米への対抗軸」という考え方で一致している半面、温度差もあり、今後BRICSの間で、いかに団結をしていくかが当面の課題となる。ブラジルやロシアの様に、経済成長が失速し始めている国もあり、不安要素は多い。また各国には様々な思惑があり、一筋縄ではいかないだろう。

このような状況で新開発銀行発足のリーダー役となっている中国が独り歩きせず、どのようにまとめ上げるのか。しばらくは注視する必要がありそうだ。(脱忘れん坊)


提供:中村勝克教授