2014年7月11日金曜日

中村勝克ゼミ:2014年6月のマクロ的な経済問題(ゼミレポート)

※中村勝克ゼミによるレポート

現在どのような経済問題が注目されているのか。中村勝克ゼミでは、毎週、「日本経済」、「先進国経済」、「新興国経済」に関する各紙の新聞記事を持ち寄ってディスカッションをしています。その中でも特に重要と考えた話題をピックアップし、このブログで月ごとに報告していきます。今回は64日から71日のニュースの中から3つの話題を選択しました。

日本経済に関しては6月18日に報道された「日銀、初めて国債の最大保有者に」という記事。これは大規模な量的緩和政策の結果、日銀が国債保有率でトップになったことを報じたものです。金融緩和を終了する際、日銀の対応がますます難しくなっている点も指摘しています。

先進国経済に関しては先月からの続報で、「ECB、初のマイナス金利導入へ」という記事になります。マイナス金利自体は6月5日に導入されましたが、6月を通したユーロ圏の消費者物価指数は前月と変わらず、近い将来、更なる金融緩和が行われる可能性もあると報告しています。

新興国経済についても先月と同様、ロシア・ウクライナ問題を取り上げています。「ウクライナ、連合協定で“いばらの道”へ」という記事で、ウクライナがEUと連合協定を締結したと報じています。この協定自体には難しい側面もあり、ウクライナ経済にとって全てがプラスとは言い切れないこと。また、ウクライナにとっての最大の貿易相手であるロシアを刺激しており、今後、難しい舵取りが迫られている点を指摘しています。



※ゼミにおける議論をベースにしているため、ピックアップされる話題は網羅的にならないこともあります。
※内容について大きな誤り等がある場合はお知らせください。



***************

【日本経済】


[6月18日]日銀、初めて国債の最大保有者に(日経新聞、毎日新聞参照)

日銀が18日発表した2014年1〜3月期の資金循環統計(速報)によると、3月末時点の日銀の国債保有残高は前年比57.2%増の201兆円となり、過去最大を更新した。

昨年4月に導入した大規模な金融緩和政策によって、大量の国債買い入れを続けているためだ。国債発行残高に占める日銀の保有比率は20.1%に達し、保険会社の19.3%を抜き、統計が残る1997年末以来、初めて最大の保有者になった。

国債残高を保有者別に見ると、保険会社は0.3%増の193兆円だったが、国内銀行は18.1%減の130兆円、ゆうちょ銀行を含む中小企業金融機関も7.8%減の159兆円とともに大きく減らした。一方、海外投資家は2.5%増の84兆円で、国内金融機関が売り、日銀、海外勢が買う構図になっている。また家計が持つ金融資産残高は前年比3.3%増の1630兆円で、3月末としては最高だった。

日銀は政策目標である物価上昇率2%を達成するまで金融緩和を続ける方針で、日銀の国債保有率は今後さらに上昇する見込みだ。しかし、目標が達成されればいずれ金融緩和政策を転換する必要がある。

日銀が国債の購入規模を縮小した途端、国債の買い手が減り、国債価格が急落して長期金利が急上昇するリスクがあるため、国債の保有残高が膨らむほど金融緩和政策を終える際の対応は難しくなる。ここまで一定の成果を収めている金融緩和政策であるが、その出口への道のりは容易ではない。(大石)



***************

【先進国経済(北米、欧州等)】

[6月5日、30日]初のマイナス金利導入へ(ロイター、日経新聞参照)
欧州中央銀行(ECB)は6月5日、ユーロ経済がデフレに陥ることを回避するための支援策の一つとして、マイナス金利を導入することを発表した。中銀預金金利がゼロ%からマイナス0.10%に引き下げられ、ECBとして初のマイナス金利の導入となった。民間銀行による中小企業向けの融資を促進し、景気回復へとつなげることが狙いである。

マイナス金利について現時点ではその効果を見極める段階にあるが、6月のユーロ圏消費者物価上昇率は0.5%と前月と変わらなかった。目標とされる2%を依然として大きく下回っており、1%を下回る水準にとどまるのは9カ月連続となっている。6月の理事会では量的緩和の決定は見送られたが、こうした状況を受け、近い将来ECBはさらなる行動を起こすことが予想される。

マイナス金利の効果次第ではマイナス幅の調整も選択肢として考えられるが、ECBが量的緩和に踏み切る可能性は一段と高まっていると見られる。(bourbon)



***************

【新興国経済(BRICS、アジア等)】

[6月28日]ウクライナ、連合協定で“いばらの道”へ(読売新聞、産経新聞参照)
27日、ウクライナは、モルドバ、グルジアと共に欧州連合(EU)との連合協定を行った。武力衝突が続いているウクライナ東部地域の安定には、同国の経済立て直しが必要と判断されたことが、この協定締結の背景に存在する。

ウクライナにとっては、この協定締結で経済的な恩恵だけでなく、同国の発展を遅らせてきた汚職の蔓延や非効率な社会運営の解消というメリットを得る。しかし、ロシアがEUの地理的接近を安全保障上の脅威と見なしているため、報復行為を受ける危険性も含まれる。

現在ウクライナは貿易赤字が続き、赤字額は国内総生産の約8%にあたる約137億ドルに上っている。またウクライナにとってロシアは最大貿易相手国であり、輸出額の約24%がロシア向けだ。さらにウクライナは優遇関税でロシアへ輸出をしており、ロシアの対抗措置で関税引き上げや天然ガス料金のさらなる値上げが実施されれば、貿易赤字の拡大は必至の状態だ。

一方で協定には自由貿易協定(FTA)も含まれており、EUへの輸出拡大が期待される。ただし、ウクライナの輸出額の約22%を占めている東部の鉄鋼製品は、製鉄設備の老朽化などで高い付加価値は望めない。また、もう一つの主力である小麦などの穀物は生産量が天候に左右されるため、これらに依存するのは難しい。以前より言われている「脱ロシア」を目指してはいるものの、非常に厳しいのが現状だ。

今後のロシアからの報復行為により、投資や貿易の減少・ガス単価のさらなる値上げなどが実施された場合、ウクライナの被る損失は年間330億ドルに上るとの試算もある。5月に就任したばかりのポロシェンコ大統領は難しい舵取りを迫られている。(脱忘れん坊)