2013年8月9日金曜日

西川 和明(教授):2012(平成24)年度 地域ブランド戦略研究所活動報告

1.福島県果樹産業復興に対する販売支援

福島市は県内有数の果物産地であり、果樹栽培による生産額は農業生産額201億円(平成18年)のうちの約6割にあたる124億円を占めており、果実生産は福島市の重要な産業となっている。しかし、原発事故を受けて、福島県における放射線量が高いということで 県の内外で福島県産の果物の販売は思わしくなく、昨年の販売量は前年比で大きく減少している。

また、市内にはフルーツライン沿いを中心に観光農園が多く存在し、果物狩りに訪れる客が激減して大きな痛手を受けている。福島市観光農園協会には52の農園が所属しているが、ちなみに当協会会長の農園では「例年1万人がサクランボ狩りに訪れていたが、今年はわずか200人だけだった。他の果物も販売量が減少し、今年の農園売り上げは2億円の減収である」という深刻な状況である。

(1)福島市観光農園協会に対する支援
果樹農業高度化を目的に、同協会会長ら4農家を出資者とする農業生産法人株式会社オブリガードの設立に協力し、その活動を支援している。その主要な活動は、温室における再生エネルギー利用型果樹栽培である。現在福島県立安達東高校温室において同高校と連携してサクランボの栽培実験を行っているが、25年度において公益財団法人郡山地域テクノポリス推進機構の「農業施設用ハイブリッド再生可能エネルギー利用システムの実証研究」を実施すべく経済産業省に申請を行っている。
(※農業施設用ハイブリッド再生可能エネルギー利用システムの実証研究については、こちらのhybrid.pdf をご覧ください)

この安達東高校での温室を利用した果樹栽培実験は、福島県教育委員会との連携で実施しているもので、農業の後継者育成にも貢献するものである。こちらのadachi-kaju.pdf はその構想を図示したものである。

(2)農家グループの販売プロモーションを支援
地域ブランド戦略研究所では、平成22年6月にからの果実シーズン以来、福島市で産出される果物のブランド化のためのプロモーションを行って来た。それまでの成果をもとに23年度には更に知名度を高めようと広報戦略を練っていた矢先に原発事故が発生した。放射線物質が拡散したとの報道に、今年は様子を見るしかないのかと考えたことも事実であったが、「丹精込めて育ててきた果物に対して今やるべきことをやらないで農業者と言えるか」というフルーツマイスター・クラブ会員たちの言葉に奮い立って新しい広報販売戦略を練り直した。

これが図のスキームである。このスキームでは、消費者に「安全性に関する情報」をしっかりと提供することで信頼を得るということは何よりも重要であるが、しかし、それだけでは放射線物質の影響を受けていない他県産に対して対等に競争できることにはならないため、お客様に買っていただくためにはプラスアルファの優位性が必要であるとの認識で臨んだ。それが、品質面での優位性である。最初の出荷商品となるサクランボについては、今までやってこなかった糖度に着目した。そして、糖度で一定のレベル以上のものしか出荷しないという品質保証を導入することにした。

スキームの具体的内容は、①放射線の専門調査研究機関と連携して農家の畑地の土壌検査および果実そのものの放射線検査を実施する、②糖度検査を行い一定レベルのものしか出荷しない、③新聞の折り込み広告を活用した首都圏での販売マーケティングを実施する、である。

24年度においても「科学的データに基づいて安全性を証明し、品質面でも一定レベル以上を保証する」というスキームは6月に行ったサクランボ出荷を皮切りに、7月以降は桃、ナシ、ぶどう、りんごなどへと移行しながら1月ぐらいまで継続して行った。

6月初めに首都圏で2万2千軒に折り込みによる広告を実施した結果予想以上の注文が果実農家に届いた。


2.食の安全・農業再生プロジェクトにおける活動

福島県においては東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により大きな風評被害を受け,地域の人々をはじめ多くの国民が食の安全・安心に懸念と心配を抱いている状況にある。安全で信頼される農産物を消費していただくためには,なによりも農産物の正確な情報を生産から流通,そして消費にいたるまで迅速に提供し,その安全を保証することが必要であり、2011年4月以降に実施してきた「食の安全・農業再生プロジェクト」研究グループでは、株式会社いちいの食品の安全管理に対する取り組みへの支援および、啓もう活動としてのシンポジウム開催などを行って来た。
(※2013年3月のシンポジウム「食卓のあんしんと、ふくしまの農業」については、こちらの2013sympo.pdf をご覧ください)