2012年10月1日月曜日

主体的な学びと読む力

※後援会報 第44号 (2012.8/1発行)転載記事

真田 哲也(経済経営学類長)

大学教育の課題について3月中央教育審議会は報告書を発表しました。その題名は「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」というものです。大学での学修の本質は「主体的な学び」そのものでありそのために時間をかけることが学士課程教育に不可欠である、と指摘されています。


「主体的な学び」の中心=ゼミ

経済経営学類のカリキュラムは「演習=ゼミナール」を中心としていますが、それはこの中教審と同じ考え方によるものです。大学には様々な講義科目がありますがそこで得られた知識は、自ら演じて習っていく場・「演習」での主体的学びによって統合されます。さらに演習で得た知識・諸能力は最終的に卒業論文を「書く」なかで更に深いものとして身につきます。卒業論文は「読む」・「書く」ことの集大成となるのです。
提供:写真部

分の関心

ここで大切なことが二つあります。一つは、この「演習」の場が形骸化しないように、自分の主体的な関心を発見・維持・発展させていくことです。最近の福大生についてのある調査によると、震災後「社会への関心が高くなった」77%、「社会貢献への気持ちが強くなった」75%、という結果が出ています。全国の大学と比較して、いずれの項目でも福大の学生は上位に位置しています(「2013大学ランキング、朝日新聞出版」)。また今年度の経済経営学類のボランティア登録学生数は50名にのぼります。震災・原発事故という負の体験を通して学生たちが視野を広げ実践へと開かれていく主体的構えをとりつつあるということができます。このことが「演習」での主体的学びの下支えとなることが期待されます。


「読む力」の大切さ」


提供:写真部(附属図書館)
もう一つ、主体的な関心から出発しつつも「なにかに関心がある」ことに甘んぜず、自分の関心をより客観化して位置付けていくことが必要です。そのためにデータや歴史、他人の考えから学び、自分を鍛え上げていくことが大切です。なかでも大切なことが「読む力」です。「読む力」は「書く力」の前提となります。我々は読むことによって書くことを学びます。注意深く読めることは注意深く書けることの前提です。社会に出て仕事をすれば様々な場面で必ず「書く」ことを求められますが、その前提には「読む」ことがあります。「読む」ことに時間をかけておくことが大学時代の大切な課題となるのです。

また読書によって鍛えられる能力のひとつが「行間を読む」ということです。文字という抽象化され「限られた情報」から書き手の考えや人柄を理解するにはそれを補完する想像力や思考力が必要となります。わかりやすい映像やパワーポイントによる図像化が進行していますが、それだけでは思考力・想像力は鍛えられません。

 「読んで考える」:この当たり前のことを大学時代に地道に取り組むことが、「予測困難な時代」において主体的に学び自分で考える能力を鍛えていく王道です。「主体的な学び」は決して自由放任ではありません。学生時代の貴重な時間をこの基礎を身につけるために使ってほしいと思います。