2012年5月23日水曜日

国際シンポジウム『震災復興メカニズムの多様性:日本における民間主導の復興と中国における国家主導の復興』を終えて

真田 哲也(教授・経済経営学類長)

3.11東日本大震災から一年が経ち、被災地の復興は新たなステージに進もうとしている。「1000年に一度」と言われる大地震と津波に加え、福島第一原子力発電所の事故に見舞われている福島県においても、震災と原発災害からの復興に向けて、『福島県復興ビジョン』の具体的な実行段階に入ってきた。人類史上でもっとも厳しい自然的災害と人的災害に遭遇している福島県の復興は、単なる一つの被災地の復旧・復興ではなく、長期停滞に陥っている日本の再建や人類の持続可能な発展に向けた社会経済システムの転換に大きな示唆を与えるものになると考えられる。


入戸野修学長
その故に、これからの復興には、長期的かつ複合的なビジョンに基づく戦略的な取り組みが必要であり、国家(中央政府)、被災地自治体、企業、地域住民、コミュニティ、NPO、大学を含む研究機関など、さまざまなアクターによる緊密な連携と協働が必要となっている。福島大学も被災地の中心的な研究機関としての役割を果たすべく、大学全体をあげて大地震と原発事故による被災実態の調査と研究、復興支援、および研究成果の社会に向けた発信に努めている。被災地における緻密な調査や研究を積み上げ、その成果を世界に向けて発信し、人類の安全と安心を脅かす自然災害や事故から人々の平常な暮らしを守るためのさまざまなテーマに関して世界の研究者らと議論しあうことは、県内唯一の総合大学としての福島大学に課せられた大きな責務であると考えている。


真田哲也学類長
今回の福島大学経済経営学類が主催し、福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの共催によって開催された国際シンポジウムは、東日本大震災からの復興に関する本大学の研究成果を世界に向けて発信し、震災復興に関する国際共同研究体制を構築するための事業の一環であった。今回の国際シンポジウムでは、復興の理念とメカニズムを問うことをテーマとし、大震災からの復興における日中比較を中心内容とした。2008年の「中国四川大地震」(5月12日)から3年という短い期間で復興を成し遂げた中国の経験を紹介し、その復興のメカニズムから日本は何を学ぶべきかを考えた。とりわけ、国家(中央政府)の強いリーダシップの下で、さまざまなアクターの力を結集して推進された中国の国家主導の復興メカニズムと、政府による迅速な対応が欠けたまま、企業や地域の主導的な役割に基づいて復興を進めている日本の民間主導の復興メカニズムは、どこが違うのか、なぜ違うのかについて議論した。

講師としては招いた2008年の四川大地震の復興計画策定や復興事業に直接携わってきた中国西南交通大学(四川省成都市)の研究者たちからは、四川大地震からの奇跡的な復興を支えた国家主導の「ペアリング支援体制」の成果や被災地の復興実態に関する報告がなされ、広域的・複合的災害からの復興における国家(中央政府)の重要な役割が説明された。一方、本学の震災と原発災害の調査研究と復興支援に取り組んでいる研究者たちからは、福島県の復興ビジョンの実行に向けた課題、被災地における工業や農業の被災状況と復興実態、さらに避難者の生活を支えるための取組みなどに関する報告がなされ、民間主導で着実に進んでいる日本の復興実態が報告された。

今回の国際シンポジウムは、研究者による復興関連の研究成果の発表が中心ではあったが、日本と中国における震災復興の実態に関する具体的な紹介と震災復興におけるさまざまなアクターの役割に関する具体的な紹介がなされた。シンポジウムの全体討論では、研究者のみならず、本大学の学生を含む地域社会の多くの聴衆も交えた活発な質疑応答がなされ、震災復興に関わる多くの人の熱い議論の場となった。

今回の国際シンポジウムを通じて、福島大学と中国西南交通大学間の国際学術交流協定はさらに強固なものとなり、災害復興に関する二つの大学の研究者らによる学際的な国際共同研究体制の構築に大きな一歩を踏み出した。最後に、放射能による身体への被害の危険性が依然として残り、海外の人々から敬遠されている福島まで足を運び、優れた研究成果を報告して下さった中国西南交通大学の朱健梅副校長をはじめとする6名の先生方に改めて敬意を表したい。


小松知未うつくしまふくしま未来支援センター助教


















塩谷康弘行政政策学類教授