2009年10月8日木曜日

飯島 充男(教授)学類長の雑記帳(※2009年):アメリカ・ミドルテネシー州立大学訪問記

飯島 充男(教授・経済経営学類長※2009年)


8月29日にアメリカのミドルテネシー州立大学を清水修二副学長らとともに訪問し、同大学経済学部の教員評価、授業改善、マネジメント、ファカルティ・デベロップメント等を勉強させていただくとともに、両校間での学生交換留学の可能性について、検討・協議してきました。

まず周辺的な第1の印象は、大変大きな大学であることです。学生数は2万3千人ほどで、福島大学の4〜5倍ですが、キャンパスの中には移動手段としてバスが走っています。図書館も大きいですし、巨大なアメフット競技場、数100台のトレーニングマシーンのあるジム等々、圧倒されます。何よりも広い広いキャンパスは「土地の制約」のないアメリカならでは、と感じ入った次第です。

なお資料によれば、2万3千人の学生のうち、学部学生は90%(つまり大学院生が10%)、女子の学生は54%で男子学生は46%、21%はminority(少数民族の意でしょう)、33%はパートタイム学生、53%の学生は夜の授業(evening classes)をとっています。


以下やや不正確かもしれませんが、修業年限等もはっきりしません。標準的には4年間で、優秀な場合は3年間で卒業も可能。その4年間で卒業する学生の比率は5割程度ではないかということです。学生定員も明確には規定されておらず、専攻の変更やまた他大学への移籍も大変フレキシブルです。

テネシー州というのは、アメリカの南部の州ですが、その南部の中でもかなり北に位置します。いわゆるディープ・サウス(かつての奴隷州で、保守的な風土あり)には含めないことが多いようですが、それでも南北戦争(1861〜65年)では南部連合側に属し、ミドルテネシー州立大学のあるマーフリーズボロは、北部側勝利の分岐点となった戦闘のあったところです(ちなみにペリーの黒船来航は1853年。南北戦争の真っ最中)。

人口は600万人弱で、福島県の3倍程度、面積は11万平方キロですから、福島県の1.38万平方キロをはるかに越えて、北海道よりも広く、日本全体の面積の3割弱にもなります。比較的平坦で、初日に外から見学した日産自動車の工場も、敷地が広大であきれてしまうほどです。

雰囲気は田舎ですが、人口は今も増加しており、自然増(出生数−死亡数)を上回る移住者(移民も含む)の増加があり、人口減社会となっている日本とはだいぶ事情は違います。東南アジア風の僧院もたまたま見学しましたが、なぜか70年代の後半にラオスからの移民がテネシー州に集中したとのことで、伝統的な宗教的儀式も保持しながら、地域に定着しています。

テネシー州は田舎だ、といっても、州都のナッシュビルには高層ビルが結構見られました。カントリーミュージック産業の世界的中心地でもありますので、最終日の夜、ダウンタウン見学も兼ねて、カントリーミュージックホールで「ナマズ定食」を食しつつ、カントリーを聞きました。70歳を越えるご老人や7歳8歳の子供もときにダンスに興じる様は、日本とは違い、さすが開けた国だとの印象ですが、黒人の方々が一切そのホールにいなかったことは、やはり難しい歴史を感じさせました。

1929年の大恐慌をきっかけに、アメリカですら遂に政府が経済に介入し、失業問題の解決を狙い大規模公共事業を行ったのは「テネシー渓谷開発」ですが、その地域でもあります。

いまや教員の側が学生の成績をつけるだけでなく、我々大学教員が学生に授業評価をされ、成績をつけられるのが一般的になってきました。実は一昨日(10月14日)の教員会議で、「学生の授業評価」の使用法について議論になりました。私としては、反対論には、一部なお大学教員が権威にすがっている面があるのではないかとも感じてしまうのですが、授業評価の方式・アンケートの様式等については確かに今少し検討の余地がありそうです。

MTSUでの学生アンケートも、改善・変更を続けています(しかし止めるといった議論にはもちろんなっていません)。「教授効果についてのMTSU学生評価」と題するそのシートは裏表2ページのアンケートですが、全体で共通する質問は40項目に及びます。

アメリカにおける競争的な大学のありかたは確かに良い面ばかりではないでしょう。しかしアメリカの大学の授業の質が高い、というのはおそらく事実で、我々として学ばねばいけないところでしょう。

本学と比較しての第1の特徴は、実に具体的な質問をしているという点です。全体の40項目のうち、33項目はそうした質問です。次回に説明しましょう。

具体的質問の33項目は以下の通りですが、長いのでまず半分を示しましょう。もちろん学生個々人の感覚を問うている訳ですが、それぞれが、<descriptive>=「言えてる・あたっている」か、あるいは「そうでない」かで、A~Eの5段階評価で答えることになっています。なお、F「答えられない」とする欄も用意されています。

1.シラバスに沿って計画的に授業が行われているか。

2.授業の目的に沿ってレポート等の課題が課されているか。

3.成績評価の方法が明確に説明されているか。

4.授業以外で学生がアクセスできるか。

5.良く準備されているか。

6.理解しやすいように話されているか。

7.講師以外の見解について論評しているか。

8.諸理論の示唆するところについて対比的に論じているか。

9.当該領域における最近の研究動向について言及しているか。

10.概念や発想の始原(origin)について言及しているか。

11.クリアーに話されているか。

12.授業全体と事例検討がうまく噛み合っているか。

13.学生の質問に注意深くまた正確に答えているか。

14.重要点を要約しているか。

15.各回の授業目的が述べられているか。

16.授業でのディスカッションが促されているか。

17.講師自身の見解へのコメントを歓迎しているか。

18.学生が授業を理解しているかどうかについて敏感か。

19.自分の授業の質を改善しようとしているか。

20.学生に関心を持っているか。

21.学生個々人とうまくなじんでいるか。

22.ダイナミックでエネルギッシュな講師か。

23.興味を持てるような説明であったか。

24.授業することを楽しんでいるように見えたか。

25.自分の授業について情熱的であったか。

26.講師は自信を持って授業しているように見えたか。

27.話すスピードや声の調子を適宜変えているか。

28.他の授業より厳しく勉強させたか。

29.最善を尽くして勉強するように促してくれたか。

30.創造的独創的な思考を必要とするような試験であるか。

31.課された試験やレポートをすぐに返してくれるか。

32.量や難易度の面で適切と思われるレポートや試験であるか。

33.成績区分が公平公正に行われるか。

この質問項目は近年のパターンのようですが、「自信を持って授業をしているか」「授業することを楽しんでいるか」「学生に関心を持っているのか」など、実に興味深い質問項目が並んでいます。これらの項目は、講師自身が具体的に目指さねばならない目標でもあるといえます。

「学生に関心を持っているか」とか「情熱的、エネルギッシュに授業をしていたか」などの質問も、フムフムという感じです。

これら33項目は、①プレゼンテーション能力、②内容構成の明確さ、③試験・成績評価のしかた、④学究的アプローチ(論争紹介等がされているか)、⑤学生との相互交流、⑥学生への学習動機づけ、の6分野・6側面に区分され、それぞれの平均値が把握されています。

さらに<Effectiveness & Worth>ということで、総括評価があります。これをMTSU学生アンケートの特徴の第2と見ます。

これは、やはり福島大学の学生授業評価アンケートと同様に、それぞれの講師の授業の総括的評価が5段階でつけられている訳ですが、やや異なるのはそれが以下の2側面で設問されていることです。

一つは「主題や教科の限定性を考慮しつつ、当該講師の教授方法はどの程度効果的か」との質問で、これに<NOT AT ALL EFFECTIVE>=「まったく効果的でない」をA、<MODERATELY EFFECTIVE>=「まあまあ効果的」をC、<VERY EFFECTIVE>=「非常に効果的」をEとして示しつつ、AからEまでの5段階評価をすることになります。

いま一つは「教科の内容に即していえば、他の教科と比較して、どの程度聴くに値する授業か」との質問で、これも「まったく価値がない」から「非常に有意義だ」の間で5段階評価をします。

つまり教授方法と教科内容の両側面から、学生が評価をしている訳です。

最後の質問項目は、回答者の属性についてです。

まず、1年生(Freshman)、2年生(Sophomore)、3年生(Junior)、4年生(Senior)、卒業生、その他のどれかにチェックです。次いで現在の成績が、GPA2.00未満、2.00~2.49、2.50~2.99、3.00~3.49、3.5~のどれに位置しているかを問います。さらに、この授業をとっている理由を聴き、最後に授業を何回欠席したかを聴いています。

氏名などはもちろん尋ねていません。

その上に、学科や個人が質問を追加することができますが、最大50項目もの質問事項が許される形になっています。

経済学部の経済学科長に伺ったところでは、学科長や学部長・執行部はこの学生評価数値を見るが、これはあくまでも各人の教育力の向上のために行われるもので、実際に学生の回答によって大きな差は出ず、むしろ特に良かったり、特に悪かったりする一部の教授が突出して見えてくるとのことです。